ASKAさんがAbemaTVのトークドキュメンタリーに出演。プロインタビュアーの吉田豪さんを逆指名しインタビューしていました。
(ナレーション)続いて逆指名したのは日本一インタビューが上手いという肩書を持つ百戦錬磨のプロのインタビュアー。吉田豪。これまで数々の著名人をインタビューしてきたプロフェッショナルがASKAの本音をどう引き出すのか?
(吉田豪)こんにちは。どうもです。お願いします!
(ASKA)お願いします。
(吉田豪)どうも。
(ASKA)はじめまして。
(吉田豪)ああー、会えると思わなかったですよ。
(ASKA)どうぞどうぞ。あ、「どうぞ」って俺が言うことじゃないね。俺、今日はインタビューされる側だから。
(吉田豪)いやいや。
(ASKA)ネットでね、本当に書いていただいて……。
(吉田豪)っていうか、認識されている時点で恐縮ですよ。
(ASKA)いやいや、分析されているから。俺は。それはね……そう。本も読んでくれているみたいで。
(吉田豪)もちろん、もちろん。グッズも見ての通り、いろいろと買って。いま着てるのもそうですけども。
グッズを着用する吉田豪さん
グッズを着てくる恒例のパターン吉田豪 https://t.co/qYwmUYHdOT #ASKA pic.twitter.com/UgpMwnC2XR
— シロウ (@long444) 2017年10月30日
(ASKA)アハハハッ! ああ、そうなの? それは今日、狙ってきたでしょ?
(吉田豪)いやいや、結構日常的に着ているんですよ。テレビに出る時に積極的に着るようにしてて。
(ASKA)ありがとうございます。いやいや、今日は「逆指名インタビュー」ということで。
(吉田豪)逆指名の人選がやっぱり独特ですよね。
(ASKA)なんで?
(吉田豪)亀田(興毅)さんと僕っていう(笑)。
(ASKA)いや、ご両人とも僕はお会いしたいから。
(吉田豪)僕、亀田さんとできればパンチ力対決をしてほしかったんですけど……。
(ASKA)なにを、また(笑)。
(吉田豪)ASKAさん、伝説じゃないですか。パンチ力がすごいの。テレビで2回ぐらい、だって具志堅用高さんと佐竹雅昭さん。ゲームセンターのパンチ力を調べるやつ、あるじゃないですか。あれで2回とも圧勝しているんですよね。
(ASKA)いやいや、まああれはね、まあまあ、もう古い話ですから……。
(吉田豪)ダハハハハッ! ASKA幻想がすごいんですよ。だから、僕の中で。
(ASKA)いやいやいや。
(吉田豪)すごいエピソードだらけじゃないですか。
(ASKA)いやいや、そんな人の人生を漫画みたいに言うの、やめてよ。フフフ。
(吉田豪)ダハハハハッ! いや、尊敬する人も……それこそデビュー当時に尊敬する人を「王貞治とアントニオ猪木」って書いているのを見た時点で、「信用できる!」って思ったんですよ。
(ASKA)あ、お好き?
(吉田豪)もちろん。
(ASKA)なるほど!
(吉田豪)昭和の男子はだいたい2人とも好きですよ。
(ASKA)そうねえ。
(吉田豪)あの、伝えたいことがあったんですけど。いま、若いミュージシャンでスカートっていうポップアーティストがいるんですよ。最近デビューした。ASKAさんの大ファンで。
スカート・澤部渡
(ASKA)ああ、本当に?
(吉田豪)会うたびにCHAGE and ASKAの話をするんですよ。
(ASKA)ありがたい!
(吉田豪)今日も報告して、ものすごい喜んでいて。だから、いまだに若い世代も慕っているしっていう。
(ASKA)いやいや、っていうのもなんかね、楽曲を書いていて、自分の中では……玉置浩二なんかとも話をするんだけど。俺たちは時代のシンガーだから、どうせ……「歌謡曲」っていう言葉のニュアンスの取られ方とは別として、やっぱりその時代時代の歌を歌う歌謡歌手だっていうところがどこかにやっぱりあって。「歌謡歌手」っていう言葉は使わないにしろ。だから、その世代の中で残っていけばいいと思ったんだけど、若い子たちが聞いてくれているっていうことはね、その楽曲が残っていってるんだなっていうことを、いまの話を聞かせてもらって。うん。もしかしたら、音楽って本当に残っていくものなのかもしれないな。でも、いやいや、そんなことはない。やっぱり新しい人たちには新しい音楽が出てきて。
(吉田豪)ええ。
(ASKA)どうせ生きているこの何十年間を生活を、たとえば生きている人間は共にしているわけで。僕たちの知らない世代が現れた時にはどうせ残らないって思っているから。割とそういう意味では覚めたところもあるんだけど。
(吉田豪)そうなんすか?
(ASKA)だけど、その若い世代がいま聞いてくれているっていうのは非常にありがたいかな。
(吉田豪)やっぱり子供の頃から見ていて、なんとなく本当に失礼な言い方をしちゃうと、ちょっとナメた部分もあると思うんですよ。みなさん、昔から見ていて。で、実際に見るととんでもないと思うのがそのへんの人たちっていうか。玉置浩二さんもやっぱり生で見て「とんでもないわ、これ!」って思うし。
(ASKA)まあ、玉置はね、あれはすごいからね。あいつはね。
(吉田豪)2人の関係も面白いなと思って。
(ASKA)ああ、ねえ(笑)。あいつは本当にね、もう……毎日遊びに来ていた時期があるから。朝7時、8時まで家にいて、それから仕事に行くんだけど。「今日は俺は金が無い!……どういう意味か、わかるか?」「わかった。じゃあ俺がタクシー代、出すよ」って。で、渡す。「これは借りたんじゃない。もらったんだからな」「わかった!」って。それで、そんな距離じゃないのに、乗ったタクシーの運転手さんが玉置と同郷の旭川だったらしいの。で、着いてから旭川のことをそのタクシーの運ちゃんと話し込んで。距離的にはそんなにないのに、あとは全部チップで渡したって。「やめろよ、お前! なんで……お前さ、返せよ、お金!」っていう。
(吉田豪)人のお金をっていう(笑)。
(ASKA)面白いやつですよ。
(吉田豪)そうですよね。飛び入りで歌ったりとかもされて。近年もね。
(ASKA)やつはね、そういうところは男気があって。「男気」っていう言葉は使っちゃいけないな。あの時の状況だからね。玉置が呼んでくれたことに返したんだから。
(吉田豪)大変な状況の時に声をかけてくれて……っていう。
(ASKA)そうね。あの、なかなかなやつですよ。
(吉田豪)いつまでも歌いたいっていう気持ちはすごい伝わるんですよね。ASKAさんが。
(ASKA)そうね。まあでも、それでも一時は事件のことがあった時にはやっぱり歌えないなと思っていて。もうきっと、人前じゃ歌っちゃいけないし、歌うことに対して堂々と歌えないんだったらもうすっぱりと辞めなきゃって思う時期もあったりして。ちょっとの時間なんだけどね。もう歌うことは無理なんだっていう諦めに入った時があって。まあ、その時にね、「なにをほざいているんだ」っていうような言い方をしてくれたんで。「やりますよ、ほら!」って言われたんで、あれにハッとして、また歌うことができるようになったんだけどね。
(吉田豪)それは、どういう風に言われたんですか?
(ASKA)うん。まあ、連絡をしてもらっていたんで。「もうとりあえず、記者会見でいま引退の発表をすることで動いてもらっているんで。まあ世話になったな」っていうことを何人かに伝えて回っている時に、「なにを言ってんすか? やりますよ!」って言われた一言で。うん。なんか……なにかに占領されていたんだね。心の中がね。それがパッといきなりはがされた感じがして。まあ、単純っちゃあ単純なんだけど。急に。そうだね。
(吉田豪)それは、スタッフの方が?
(ASKA)いや、メンバー、メンバー。仲間内に。それも1人じゃないからね。同じようなことを言ったのは。だから、まだまだやらなきゃいけないなと思っているんだけどね。
(吉田豪)だけど、それぐらいまでは追い込まれていたみたいですね。もう辞めなきゃって。
(ASKA)うん。追い込まれていたっていうかね、「もう歌えない」って思ったから。自分で、やっぱり堂々と歌えないものは、お客さんには伝わらないから。自分で、やっぱり堂々と歌えないものはお客さんには伝わらないから。お客さんってすっごい敏感だから。お客さんがどういう精神状態で、どういう空気か?っていうのをずっと感じながら歌うわけでしょう。で、なにか一言を発した瞬間に、空気はファッと変わるから。変わった空気をすばやく察知して、それに対応しなきゃいけないわけでしょう。だからね、本当によく「ステージは生物だ」ってみんな言うし、「毎日が生物で別物だから」っていうのはあの頃はわからないで使っていたけど、いまはすごくよくわかっている。もうライブっていう空間はその日その日の一瞬しか起こらないから。ずーっとお客さんっていう1人の精神状態が揺れている中を、最後は同じ出口で出ていくわけでしょう? そこに誘導するのが、自分たちステージ上の役目であり。だから、そういうことを考えているんだけどね。
(吉田豪)じゃあ、事件の後にお客さんの前に出るのってかなりプレッシャーとかあったんじゃないですか?
(ASKA)いや、それはなかったかな。なんか福岡の友達がいきなり、そういう場を設けてくれたので。もうお客さんの多さは関係なかったから。呼んでくれて、そのままパフォーマンスとなったんだけど。まあ、でもそれは普通にできたかな。うん。だから、それはあるんだけど。まあでもいま、今回僕はこの逆指名をすることによって、僕のことも少しは調べてもらったと思うんだけども。いま、自分がそこまで追い込まれていた状態があって、とりあえず音楽というものを自分の中から1回なくしてしまわなきゃって思った時から、なんかすごく強い思いっていうのがあって。実はね、もう20年ぐらい前からね、いまのような音楽業界になることがわかっていて。
(吉田豪)ああー、音楽バブルの頃に、もう?
(ASKA)もう音楽業界はおそらく、このまま行くと衰退するな。その衰退する原因は僕らのみあるんだろうけど、あまりにも世の中に迎合している音楽業界はこのまま終わってしまうなと思ったわけ。で、まさにそうで。それに対していま、自分なりに動いている最中なんだけど。やっぱりほら、どんだけ……まあ苦労とは言えないよ。楽しんで作っているし、音楽をやっているから。だけどやっぱり、それに注ぎ込んだ時間とか自分の精神状態の中でやっぱり引っ張り出してきたものだとか。それなりに自分は作品を作っているんだけど、それをね、「聞き放題」っていうね……。
(吉田豪)はい。海外ではもうそれが主流になって。
(ASKA)うん。その枠の中で、自分の音楽が聞き放題にされていくことの懸念があって。俺はその中には入っていないのね。絶対に入らないですよ、だって。それは、無理。聞き放題にされるのは。だから、今回僕は『Weare』っていう名前をつけて、アーティストのための配信サイトっていうのを……まあ、僕は広報みたいなもんだから。別に中心人物じゃなくて。仲間の中でもまだ名前が出てこれない人がいるから。
音楽配信サービス『Weare』
(吉田豪)ええ。
(ASKA)まあいま僕はとりあえずどこにもいま、制約がないから。束縛がないから。なんでも発信できるということで今回、発信させてもらったんだけど。やっぱり、アーティストがいまね、活動しようにも活動できなくなっていて。もちろん、時代の中でちゃんと活動できる人は常に現れるので。でも、そういう人にスポットを当ててもしょうがない。一部の人だから。音楽をやっている人が、音楽で食べられない状況にどんどん追い込まれていることはね、これは危機感だと思わなきゃいけない。音楽業界は。
(吉田豪)CDが売れない時代にどうやっていくのか?っていう。
(ASKA)そうそう。で、それをね、「売れないからどうしようか? じゃあもっと世間が喜ぶように。もっと喜ぶように。もっと喜ぶように……」って。結局最後に出てきたのは「タダで聞かせる」っていうことになっちゃったの。そんなことしたら、もうミュージシャンは出てこないでしょう。だから今回僕は配信サイトを立ち上げて、ここで配信音源を買ってくれたら70%をミュージシャンに還元する。このサイトは一切利益を追求しないと。本当にそのつもりなのね。だから、「公開しろ」って言われたらいつでも数字は公開できるしね。
だから、いまやらなきゃいけないのは、とにかくたくさんアーティストがここに集まって、ここから配信して。だからこの会社は全然利益も、お金をプールする会社じゃなくて、アーティストがいっぱい集まるごとにこの会社が大きくなっていく。大きくなっていくけど、この会社自体には何もお金はない。アーティストがここに集まってくればくるだけ大きくなるっていうだけの話。で、そういうことをやって。これはずっと前の
構想なんだけど、やっと発表できるところまで来たので。まあ、それもこれもね、いま自分が縛られるものがないからできていることなんで。まあ、これに対してはいろいろと考えることはありますね。
(吉田豪)たぶんだから、事件がきっかけになっている部分も大きいと思うんですよ。レコード会社はたぶん、契約はもう難しいだろうし……っていう。
(ASKA)そうね。だから1人でやらなきゃいけなくなったところから、以前から考えていることに向けて動き出せたっていうかな。で、結局これをしゃべると、みんなミュージシャンは共鳴してくれる。「じゃあ、やろうか?」っつった時に、「いや……実は契約があるんだよ」っていうところでの縛りの中で動けないから。でもまあ、そうは言わず、音楽業界の活性化ができるならこんないいことはないので。少しがんばってみようかなっていま……「少し」じゃないな。かなり本気で思っているかな。
(吉田豪)たしかに、大手の配信の会社とかも、パーセンテージがすごい低いんですよね。1回、調べたことがあるんですけど。
(ASKA)ああ、そうなんだ。そりゃあ、調べているよね。そうだよね。
(吉田豪)ポッドキャストを配信しようとしたんですよ。そしたらもう、全然こっちに(収入が)入らないってことがわかって。
(ASKA)そうね。だって、向こうはフォーマットを1回組んでしまって。あとはサーバーの問題でしょう? 容量が増えていくだけだから。フォーマットを組むのに時間はかかる。アプリケーションを作るのにも時間はかかる。でも、作ってしまうと高速道路と一緒で、ある時にリクープできるわけですよ。リクープしてからが全ての利益となっていくわけだけど。まあ、もちろんそれをね、会社として……「ベンチャー」と呼ぼう。これをベンチャーの生業としてやっているんだったら、それはそれでありなんだけど。
僕らはベンチャーじゃないから。音楽がやっぱり90年代の時に、自分たちじゃないよ。音楽がさんざん世の中に重宝されたり、大事にされていた時期。その時期をもう一度目指さなきゃいけない。みんな諦めているから。「もう音楽では食べていけない」だとか、「音楽産業はもう終わった」ってみんな、口を揃えて言うんだけど。
(吉田豪)「ライブでは稼げるけど、楽曲では難しい」みたいな。
ミュージシャンが食えない時代
(ASKA)そうそう。で、口を揃えてみんな言う、そんなあなたは音楽業界の人じゃないか?って思うわけ。あなたが言っちゃダメでしょう!っていうのが。で、まあ本当にいま言われたようにね、これから先はもうライブをやれる人しか残らないという時代に入ってしまったんだけど。これはひとつのあり方として、間違いじゃないから。でもね、やっぱり音楽にはいろんな種類があって。ライブが得意な人と、ライブはやらないけど、楽曲を作るのは得意な人と、住み分けがあるんだよね。その住み分けさえもなくなってしまって、ライブをやれる人だけが残っていくこの……全てが単一志向で動いていくことはね、これはどこか、常に選択がないといけないと思っているので。だからそういう意味ではね、ちゃんと作った人に還元されるべきもの。還元されたもので、また新しい音楽を作っていく。より良いいい環境で。たとえば、弦(ストリングス)にしても、生弦をみんな使いたい。でも、使うお金がいまはない。なぜかと言うと、楽曲を世の中に買ってもらえないから。お金が入らないから。「制作費、これで作ってくれ」と言われて、この中で作らなきゃいけない状況の中では、とても贅沢な、ゴージャスな音作りができない。
(吉田豪)はいはい。
(ASKA)これができない自分を受け入れてやるしかない。でも、次はもっとこうなる。もっと次は……って。これ、音楽やれないよ。ミュージシャンは。そんなこんなでね、今回は「無謀だ」とか「音楽業界に背いていろんなことをやり始めた」とかさっそく、いろんなことを言われて始めて。まあ、ある意味「敵」と呼ぼう。なる人たちの影はちらつき始めているんだけども。でもね、最終的にミュージシャンが集まって、一人ひとりが個人商店で独立して。ただそこに、隣にやつがいて、隣にやつがいて、隣にやつがいて……いつの間にかこういう風な広がりになっていれば、それはもう全てじゃないかと思っていて。だからそういうような意識改革をする時代なんだと思う。いまは.
(吉田豪)ASKAさんはすごい、そういう世の中の流れとかを考えるタイプだと思うんですよ。いま思うのが、ちょうど元SMAPの3人が「新しい地図」として、そんなに地上波メインじゃない活動を……だから地上波メインじゃなくても芸能活動とかを続けていける時代になってきたと思うんですよ。まあ、このAbemaもそうですけど。ASKAさんとかは、それをどういう風に見ていますか?
(ASKA)うん。比重はテレビなんだけど、実のところは芯を食っているのはどこか?っていうと、やっぱり「見たいものにアクセスする」という行動を取らせてしまうネットの力っていうのは大きいと思うの。ということから考えると、実は音楽番組なんていうのもそういうところに来ていて。もちろん、大衆に自分の音楽を聞いてもらうのはテレビなんだろうけど、でも本当に心を打っていく、心を刺していく歌となっていくには「見たい」と思う人の気持ちに対して応えていくっていうそのオンリーワンの時代だよね。そういう意味ではね、実はこのAbema TVの枠の中で今回僕は初回に選んでいただいたことはすごい光栄で。いみじくも、数日前に「これから音楽番組はネットが音楽番組として台頭していくんじゃないか?」っていうことをしゃべっていた矢先だったんで。
(吉田豪)はい。
(ASKA)だから番組の内容も聞かずに「やろう!」ってそう決めて。で、この番組が逆指名インタビューって、後で聞いたことなのね。
(吉田豪)なるほど、なるほど。
(ASKA)でその時に僕はひとつ条件を出して。もう昔からこだわってきた、「フルサイズを歌わせてくれるんだったら出演させてください」っていう。これだけだったかな。
(吉田豪)テレビサイズでは……まあ、ある時期からは歌っていたけど、もともとはフルで歌ってきた人なわけですよね。
(ASKA)そうだね。うん。ずっとデビュー当時から、ある意味どこか尖っていた部分があって。テレビサイズっていうのにすごい抵抗があって。でもそれを……テレビサイズを受け入れなかったから自分たちの輪郭っていうのを世の中に見てもらえるようになって。たとえば『SAY YES』のヒットのあたりから、いまそれをやるとかえって敵を作るんじゃないか? これ(天狗)に見えてしまうんじゃないか? ということで、テレビサイズというものを受け入れるようになったら……スタッフも入れ替わりがあるでしょう? 若いスタッフと。現場のスタッフ。そうすると、次の打ち合わせは知らないスタッフが来て、いきなりテレビサイズから始まるから。もう、それが当たり前になってきて。
(吉田豪)それが。はいはい。
(ASKA)だから、結局自分たちの世の中に対してこう映らなきゃいけないと思った考え方っていうのは、まあ正解ではあるんだけど、諸刃の剣でもあって。結局それは、いま考えるとやっちゃいけないことだったなっていう風に思っているところもある。
(吉田豪)受け入れたことでバカ売れしたみたいな部分はあるんですか? そこって。
(ASKA)いや、結局受け入れなかったことで、自分たちの足場が作れたので。受け入れてしまったことで、足場が崩れてしまったと思っている。まあでも、とはいえ番組の中でたくさんのシンガーが集まって、いろんなことを紹介するのがテレビ番組なので。それに対して、気持ちはあれど、それを述べることはなくて。「だったら出なければいいじゃないか」っていうことに徹していたので。だから、そうだね。もちろん、必要な時はプロモーションと考えてテレビサイズっていうのはあるのであろうけど、そうじゃない時には、「だったら、出ない」っていうことを強くやっていくことが、これから先の音楽生活の中で自分を表現していくことになるんじゃないかなと思っているんだよね。
(吉田豪)いまのところは、その九州のローカル番組に出て、そしてAbemaに出て……っていう感じですかね?
(ASKA)うん。そうですね。福岡ではね。もうコンプライアンスの問題で……いろんなところではじめてコンプライアンスっていうのを味わって。それで発表されたものはマスコミにとっては格好のネタで、どんどんそれが広まって。
(吉田豪)匿名コメントは多いですからね。こういうのは。
(ASKA)ねえ。自分のことがきっかけなのかどうかわからないけど、世間がやっぱりそういうスクエアにかっきりされた報道の中での、ここの外側を読むようになってきたから。ここだけが報道されているんじゃないっていうことをずいぶんと気づいてくれだしたので。だから、今回はAbemaTVに出していただいたんですけど。いろんなことがすごく、誤解も解けてきたし。やったことは悪いんだよ。絶対に悪いんだよ。だけど、そうじゃないところで接してくれる方がすごく僕の場合は増えてきて。そこに対してはちゃんと応えていこうっていう気持ちはすごくあるかな。だから、今回の音楽配信なんていうのも思い切ってやれたんだと思う。うん。
(吉田豪)ASKAさんはたぶん、昔からメディア不信みたいな部分があった人だと思うんですよ。
(ASKA)うん。ある時期からね。
(吉田豪)ある雑誌とちょっとモメて、それを丸々単行本の半分ぐらい、そのバトルについて書いたりとかっていう。
吉田豪 CHAGE and ASKA 飛鳥涼の魅力を語る
(ASKA)うんうん。あれはね、世の中っていうよりも、やっぱりすごくライブ活動をやってきて、僕らのことを本当に愛してくれているオーディエンスがいて。まあ、何気に今日聞いてくれている人はその次の予備軍みたいなオーディエンスで。僕らのことを愛してくれている人たちの。だけどね、結局そのコアな人たちに誤解を与えたままじゃないけないと思ったわけ。だから、あの本は世の中に訴えるつもりじゃなくて、本当にコアで応援してくれる人たちには、ちゃんとこの出来事はしゃべっておかないと。「そういう人じゃない」っていうことをわかってくれたとしても、でもああ書かれると信じてしまうので。だから書いたんだけど、結果的にね、やっぱりほら。ないことをカギカッコを付けて書いてくるわけだから。それにはちょっとね、ちゃんと反論しなきゃいけないなと思ったな。ああ、それも書いてくれたもんね。本当にありがたかったですよ。
(吉田豪)面白い本だったんですよ(笑)。
(ASKA)まあまあ、ここでね、そんなことを言ってもしょうがないので。未来を語りましょう。ねえ。これはしょうがない。
(吉田豪)ええ。いろいろあって、大変だったけど。
(ASKA)大変だったけど。とりあえず僕はいま、音楽を作ることに専念していて。さっきもおっしゃったように、とかくいままでのプロモーションではどれだけお金をかけても届かない世代が、ある種皮肉なことに事件によって音楽を聞くようになってくれて。10代の子たちなんかが聞いてくれるようになっている状況が生まれているから。それはとてもいま、自分の中では起こった現象というか、そうそうこういうことを体験できるシンガーはいないので。やっぱりある程度の年齢、それからキャリアを持つと、いろんなものを自分の中で抱えるけど、失うものがひとつだけあって。「新鮮さ」。
(吉田豪)ああ、はいはい。
(ASKA)この新鮮さっていうのは、絶対に得ることはできないから。これは無理ですよ。新鮮さを持っているのは、デビューした人だけ。表で。それからどんどん失っていくのが……でもね、今回あの事件によって僕は二度目の新鮮さっていうのを持ち合わせることができたんだな。これが。
(吉田豪)ですよね。
(ASKA)だからそこは大切に。その層に向かってもちゃんと歌を歌っていかなきゃいけないなと思っていますね。
(吉田豪)たぶん人前で歌える喜びみたいなものを改めて味わえた。
(ASKA)そうかな。うんうん。ですよ。
(吉田豪)プラスにするしかないですもんね。
(ASKA)うん。いまはね。そう。背いちゃいけないこともしっかりあるので。といって、そのことばっかり考えて、頭を垂れて生活するなんていう人生も送りたくないので。やっぱりある種、区切り目をつけて。あったことはあった。でも、前を向いて行かなきゃっていうところをすごく自分の中で、ある種区切り目ができたので。それからはどんどん前に向かっていってるかな。いまは。うん。だからそういうところをもう、精神状態だとかさ、起こったこととか全部知ってくれているから。僕はもう、記事を見ていて読ませてもらいながらもう笑うところもあったよ。俺。
(吉田豪)自分で?(笑)。
(ASKA)「こんなところも細かく知ってくれている」なんていうのはね。
(吉田豪)ファンクラブ会報からなにから、相当買っていますからね(笑)。
(ASKA)ああ、そうだったんだ! それでよく知ってくれていたんだね。
(吉田豪)もともと興味があったのが、まあ事件きっかけでよりちゃんと調べようと思って。で、調べれば調べるほど、好きになるんですよ。
(ASKA)ありがとうございます。
(吉田豪)「この人、面白いわ!」っていう(笑)。そこを伝えたくなっちゃったんですよ。
(ASKA)ああ、そうかそうか。いやいや、本当に読ませていただいておりますよ。
(吉田豪)よかったと思いましたよ。変に叩いたりしていなくて(笑)。
(ASKA)アハハハッ! いやいや、もうね、叩かれた人もね、その部分はストレートに受け止めて。とはいえ、当然だよなと。あのね、『バイキング』の坂上(忍)くんがそうだった。
(吉田豪)ああ、はいはいはい。
(ASKA)彼も最初は叩いてくる側にいたから。でもね、彼を見ているとね、いろんなことをフラットに言う人だから。「ああ、叩いて当然だな。このフラットな坂上くんという人を、知りたいな」って僕は思ったのね。で、自分から「会いたい」ってアプローチしたのよ。で、会うことになって、2、3時間しゃべったのかな? だいぶ面白いわ。やつは。すごいいい男だなと思って。それからね、まあ、ことがあるごとに連絡はしたりしているんだけど。そういう風に、叩かれてもかえって僕は面白いと思った人には会ってみたいなっていう気持ちは変わらないかな?
(吉田豪)ちなみに、井上公造さんとかに対してもそんな感じ?
(ASKA)ない!(キッパリ)。
(吉田豪)ない(笑)。
(ASKA)フハハハッ!
(吉田豪)「あの野郎、曲流しやがって!」みたいなことも、ない?(笑)。
(ASKA)ないない。まあ、ジョークジョーク。まあ、そんなこんなで、ここであんまり語れないからさ。
(吉田豪)ですよ(笑)。でも、ついいろいろ言っちゃうタイプですよね。
(ASKA)うん。我慢できないからね。そうそうそう。なんかね、こうやって共有すると、みんな仲間だと思ってしまうわけ。これが俺が騙されるところなんだよ。
(吉田豪)ダハハハハッ!
(ASKA)もしかしたら敵になる人がいるかもしれないから。これ、気をつけなきゃいけないんだけど。これ、みんなこうやって共有すると、「よーし、仲間だ。家族だ!」って言ってしまう、俺はダメだよな? フハハハッ!
(吉田豪)ダハハハハッ! まあでも、信用できますよ。そういうところも。
(ASKA)そうっすか? いやいや、まあこれからもね。本当にありがとうございました。今日は。
(吉田豪)ありがとうございました!
(ASKA)今日って俺がインタビューされる側なのに、なんで毎回インタビューするのよ?(笑)。
(吉田豪)ダハハハハッ!
<書き起こしおわり>
さすが吉田豪。いきなりスイングしとる。
— Hard Blow! (@hardblowblog) 2017年10月30日
https://t.co/uvx6jvQuuv